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monthly panda back issue
「家路」                2008年10月


可愛らしい刺繍のある手作りの布バックを右手に抱え
肩から通勤バックを斜めにかけたお父さんと、
帽子の似合う男の子が電車に乗り込んで来た。
週一のラジオスタジオからの帰り、
僕は懐かしさに魅かれて彼等をずっと見ていた。
男の子は自慢げに保育園での一日を喋り始める。
会社帰りのお父さんは途切れ途切れに相槌を打つのがやっとだ。
そんな疲れてるお父さんを察してか、
男の子は悪びれる事無く自然に話すのを止め
口を真一文字に結んだ。
そしてお父さんと繋いだ手をギュッと握りしめた。
40歳代半ばに保育補助として保育園通いをした
あの頃のあの日の夕暮れ時が蘇った。
ひとりまたひとりと帰ってゆく中、
5歳児のAくんのお父さんはまだ来ない。
いつもはお母さんなのに今日はお父さんが迎えに来るんだと
朝から自慢げだった。
時間つぶしの絵本にも身が入らず
ドアの辺りをチラチラと伺いつつ、 口をついて出るのは
「お父さん来るかなあ お仕事忙しいのかなあ〜……」
そして突然「ウワァーッ、お父さんだあ〜」
とAくんは叫び飛んで行った。
「遅くなって ごめんな」と言いながら照れくさそうに
両手を広げて立っているお父さんめがけて。
あれから何年経ったのだろう。
今もあの日の様な寂しいけれど
ほんのり温かい夕暮れ時が続いていたんだ。
電車の中、目の前の男の子が
あの日のAくんに思えてならなかった。




 
 
 
 
photo by パンダ。
 
9月 10月 11月
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