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「別れ」 2002年2月 一週間程前からべティはもう何も食べようとしなかった。 庭犬として暮らしたせいか、 せっかく暖かくした部屋に落ちつこうともせず、 真冬の空の下、いつもの庭の隅っこのお気に入りの場所で うつらうつらまどろんで は、 やせ細った体をひきずりひきずり歩く。 真夜中だろうとキャンキャン吠えては僕をたたき起こし 「見てろ」と言わんばかりに 歩く。 14歳を目の前に、命の限りを全うするかのような その気迫と痛々しさに 僕はただただ圧倒されていた。 2月23日、陽だまりの庭からいつもとは違う 「ギャンギャン」という声がした。 もはや立っているのがやっとのことなのに、 庭のまん中までヨロヨロ歩くと、 ほんのわずかばかりのオシッコをした。 そしてほとんど見えなくなった眼で僕を捜す。 「こっちだこっちだ」という声に ベティはこん身の力をふりしぼって 僕へゆっくりゆっくり向かってくる。 「よーしいい子だ、頑張ったね」と抱きあげ頬ずりをした。 するとホッと安心して眠るかのような仕草のあと、 一瞬の軽いけいれんがベティを襲った。 そして動かなくなった。 僕は大声になって「おいベティどうした!」と叫んだ。 うろたえて何度も揺り動かし叫んだ。 みるみる硬直してゆくベティが涙でかすんで見えなくる。 棒立ちのままベティを抱いてどのくらいつっ立ていたんだろう。 気がつけば僕らを暗い闇が包んでいた。 ![]() ブラッキー(左)とベティー(右)
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